03 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 05

地下教会

俺は濡れ衣を着せられ当局に逮捕されたが、刑務所を脱出し地下に潜った… まま潜伏中orz

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/-- --. --:-- | trackback: -- | 本文: -- | edit

『蘭陵王』読了 

『蘭陵王』(田中芳樹・文春文庫)
ranryouou
久々の田中芳樹の中国歴史もの。
南北朝時代後期の歴史小説としては充分面白いが、やはり人物造形に難ありか。
形態としては「娯楽歴史小説」の体裁をとっているが、正史からの引用が非常に多い。
従って、読んでいるとややテンポが悪く感じる部分があるかも知れない。ただ、中国の史書らしい歯切れの良い文言は嫌いではないので、個人的にはあまり気にならなかった。また、戦闘を描く場面では田中芳樹の円熟した筆力が存分に発揮され、非常にテンポ良くかつ迫力のあるものになっていると言えるだろう。

また、本書のもう一つの魅力として、日本ではあまり名の知られていない中国史の良将たちが次々と登場してくる点だろうか。蘭陵王自身も「三国志」や「史記」の名将たちほどメジャーではないし、斛律光段韶はもとより、蘭陵王の雄敵として描かれている陳将・蕭摩訶や周将・宇文憲韋孝寛らにしても、恐らく知っている人間は非常に限られているのではないだろうか?
(※上記リンクはwikipedia。リンクのない段韶・韋孝寛はwikipediaにページがない!)
南北朝の戦乱を彩った名将たちが次々と登場してくる様は、やはり純粋に嬉しい。
田中芳樹の面目躍如と言って良いだろう。

…が、やはり悪い癖も出ている。
まず、蘭陵王の人物造形があまり良くない気がする。全く感情移入できない
いや、イケメンで戦上手で、世が世なら皇帝になっていてもおかしくないからって嫉妬しているわけではない。あまりにも完璧超人すぎてついていけないのだ。蘭陵王が超絶イケメンで、音楽の才にも恵まれ、戦上手で、将兵を労る優しい気遣いのできる人間だった、というのは紛れもなく史実である。ただ、
 世の中そうそう完璧超人いないものだ!
そういう訳で、『北斉書』をちょっと斜め読みしてみたのだが、やっぱりちゃんと面白い逸話があったりする。

蘭陵王(長恭)が
 ・「貪」(戦場での略奪)を命じていた ※後漢の馬援同様、保身の為
 ・それを咎めた尉相願に泣いて助言を請うた
とある。これも紛れもなく史実である。 詳細はこちらを参照のこと。

このエピソードを知って、蘭陵王にもの凄く感情移入できるようになった。
本当に素晴らしい人だったのだと思う。戦場では勇猛果敢、私生活も慎ましく手に入れたものを他人と分かち合おうとする人の良さについては称讃を惜しむべきではないだろう。ただ、欠点無しだと息が詰まりそうではないか。こうした保身に汲々とする蘭陵王人間くさくてすごく魅力的だと思うのだがいかがだろうか。

本作ではこうした保身は全て蘭陵王の弟・魚陽王の専売特許にされてしまっている
少し気の毒かもしれない。

逆に、蘭陵王の脇を固める人物は非常に良かった。
兄弟たちの中で(欠点も含めて)一番格好良く描かれていたのは弟・安徳王だろうか。
亡国の中、気を吐いて意地を見せつけたまさに「不屈の闘将」と呼んで良いだろう。感情の激しさといった欠点も含め、個人的には以前から非常に気に入っていた人物で、この作品でも非常に魅力的に描かれていて嬉しかった。

また、一番の敢闘賞は天真爛漫なヒロイン・徐月琴かもしれない。
徐之才から歴史の手ほどきを受けることで読者が北斉皇室(高氏)の基礎知識を得られるように計算してあるのは見事だったし、月琴の容赦のないツッコミが非常に爽快だった。史実の人物ではない為、自己主張がどぎつい訳ではないのだが、不思議な存在感を放っていた。個人的には田中作品のヒロインで屈指の好キャラクター。
2012/03/16 Fri. 01:35 | trackback: 0 | 本文: 2edit

この記事に対するコメント:

>盛り上がりに欠ける
そもそも『蘭陵王』というよりも、『北斉衰亡史』というかんじですからね~
北斉を中心とした、南北朝時代の群像劇ですから。
蘭陵王自身は政治の中心から遠く離れているのですが、作品自体は乱脈を極める北斉の皇室についてかなり紙幅を割いています。そのへんが物語としてのまとまりを悪くしていると感じました。まぁ、個人的には不満はなかったですけど。

>北斉王朝の駄目っぷり
まぁ、駄目なのは確かですけど王朝を確立して行けそうな明君がいずれも早世してしまった、という不幸があったの間違いないです。ただ、北斉皇室はいずれも煬帝-李世民に近い気質(有能だけど、激しやすい)だと感じました。

>北周の宣帝
北斉の暗君たちやこの北周の宣帝を見ていると、以下に劉禅が真っ当なのか再認識できますよね(^^;
周囲からやや資質に疑問を持たれていた(劉備だって劉禅の才知に自信があれば「君自らとるべし」とか言わないでしょう)のは同じですけど、宣帝ほど放埒を極めてはいませんから。諸葛亮→蒋エンと真っ当な宰相が政権を握っている限りは無茶はしそうにないですし。

>徐月琴
「言いにくいことを言っちゃう」キャラですからね。
個人的には、おっさんが軽妙な軽口を叩き合うのが田中節の真骨頂だと思っています。キャゼルヌとヤンとか、ポプランとコーネフとか。てか、ぶっちゃけ、田中作品の女性キャラはあまり引き出しが豊富とは言い難い気もしますので。必然、男性キャラに目が行きます。

>完璧超人
でしょうね。李成民の書き方とかを見ていると。
ただ、個人的には史実の蘭陵王イチオシです。戦場では勇猛果敢、イケメンで部下には優しいけど、実は保身に汲々としている(というよりも、係累や部下たちのことを考えて自重していたのでしょうね)。荒々しい人物の多い北斉皇室の中では、異彩を放っているかと思います。

カレリヤ #- | URL | 2012/03/18 02:12 * edit *

読み終わりました。
個人的には史実準拠のためか最後の蘭陵王のあっけない死に方が小説としてはいまいち盛り上がりに欠けました。
ただ、これは言っても仕方が無いので、基本あまり知らない時代の名将達の活躍を読むことが出来て満足です。

私的にも安徳王は蘭陵王の死後もよく戦って尻すぼみな物語を支えてくれましたね。
これがなかったら、私的にちょっと辛かったかもしれません。
あと、基本北斉王朝の駄目っぷりが酷いですが、最後の最後で周の宣帝さんがやらかしてくれて、ちょっと「あんた、なんてことしてくれるんだ」とつい心の中で突っ込みを入れてしまいました^^;
一応この展開も知ってはいたのですが、ラスト付近で数行で全て台無しにしてくれたので、すごくインパクトがありました^^;

>徐月琴
殺伐、ドロドロした北斉王朝を語るにあたっての一服の清涼剤ですね。
こういう胸のすくキャラを書かせると田中芳樹氏はうまいです。
月琴がいなかったら、読んでいてどんどん鬱々とした気分になりそうですし。

>蘭陵王
たぶん田中氏なら完璧超人として書いているだろうなという気がしました。
なので不満はないのですが、史書をかなり引用しているので、そこまでするなら、蘭陵王の違う一面も注釈みたいに引用して補足して欲しかったですね。

雪翡翠 #leF2ecbc | URL | 2012/03/17 12:05 * edit *

コメントの投稿
Secret

トラックバック:
トラックバック URL
→http://catacomb2011.blog.fc2.com/tb.php/269-2d178683
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。